「将来は美容外科医になりたい。」
これは研修医の頃から変わらない夢でした。
ただ、その夢を叶えるために、一つだけ大きな悩みがありました。
形成外科に進むか、それとも麻酔科に進むか。
美容外科を目指す私が、麻酔科を選んだ理由
そんなとき、当時の上司にかけてもらった言葉があります。
「美容外科をやりたいなら形成外科もいい。でも麻酔科なら、さまざまな診療科の手術を見られるし、術前から術後まで患者さんを診ることができる。全身管理も身につく。美容以外の選択肢も広がるし、あとから全身管理を学ぶのは本当に大変だから、若いうちに経験しておいた方がいい。」
その言葉に背中を押され、私は麻酔科を選びました。
そして気づけば……
思った以上に、麻酔科が面白かったのです。
「何も起こらないこと」を当たり前にする仕事
外科、整形外科、形成外科、婦人科など、さまざまな診療科の手術に携わり、患者さんの全身状態を管理する毎日。
血圧、脈拍、呼吸、酸素濃度……。
わずかな変化も見逃さず、「何も起こらないこと」を当たり前にするために集中する仕事です。
その奥深さに魅了され、気づけば麻酔科専門医を取得するまでになっていました。
美容外科の手術を間近で見られた経験
また、美容外科の麻酔にも数多く携わる機会がありました。
美容外科の先生方のオペを間近で見学し、
「なぜこのデザインなのか」
「なぜここを切開するのか」
「どうしてこの縫合なのか」
そんな疑問を直接質問できたことは、教科書だけでは学ぶことのできない貴重な経験でした。
ペインクリニックで培った注射手技
さらに、ペインクリニック外来も担当していたため、神経ブロックや超音波ガイド下での注射など、多くの注射手技を経験しました。
麻酔科時代に培った、解剖を意識した注射手技や痛みに配慮するための知識・経験は、現在の美容医療にも生きていると感じています。
美容医療も「医療」であることに変わりはない
もちろん、
「形成外科に進んでいたら、また違う美容外科医になっていたのかな。」
と思うこともあります。
でも今は、麻酔科を選んで本当に良かったと思っています。
美容外科は、美しい仕上がりを追求するだけの仕事ではありません。
万が一の事態にも冷静に対応し、患者さんの全身を診ることができることも、美容外科医にとって大切な力だと考えています。
麻酔科では、命に関わる緊迫した場面も経験しました。
だからこそ、「何も起こらないこと」がどれほど大切なのか、そして「もし何か起きたときに何をすべきか」を常に意識しています。
美容医療は自由診療ですが、医療であることに変わりはありません。
私は、施術の技術だけではなく、安全管理やリスクマネジメントまで含めて美容医療だと考えています。
美しさの先にある「安心」まで
医療に「絶対」はありません。
だからこそ私は、仕上がりの美しさを追求することはもちろん、万が一の事態にも適切に対応できる知識や経験を持ち、患者さんに安心して治療を受けていただける美容外科医でありたいと思っています。
遠回りに見えた麻酔科という道。
振り返ってみると、その一つひとつの経験が、今の私の美容医療につながっています。
形成外科とはまた異なる角度から、美容外科に必要な知識や経験を積むことができたことは、現在の私にとって大切な財産です。
これが、私が歩んできた道です。
次回は、私が美容医療で最も大切にしている「自然な美しさ」についてお話ししたいと思います。